出会い系を建てる

ボクは牝馬と相性がいい方で、今週行われるクイーンCでもマサキビゼン(52年)、カバリエリエース(56年)、アイノフェザー(59年)と3回優勝することができた。 だが、それ以上に印象に残っているのが、ダイナカール(58年)で5着に敗れたことだ。
楽勝して不思議ない力を持っていたし、調子が悪かったわけでもない。 発情(ふつう春に3週間周期で訪れる)にぶつかったとも思えなかった。
いまだに敗因がわからないのだ。 このレースではテンモン(56年)、メジロラモーヌ(61年)といった一流馬も敗れているように、春先の4歳牝馬がいかに難しいかがわかるだろう。
長年の体験でボクが得たのは、この時期の4歳牝馬には、彼女たちの気持ちに絶対逆らってはダメということ。 それまで無我夢中で走っていたのが、ちょうどレースの厳しさを知った頃で、走ることが嫌いになってしまう馬もいる。
中山から東京にトラックがかわったのを気にして、レースに集中できない馬もいる。 そうした繊細なタイプは牝馬に多い。

ボクは馬でなく馬の気に乗るように心がけているが、若い牝馬に対しては特にその気持ちが強い。 レース中、行きたがったら行かせる。
行きたがらなかったら無理をしない。 牝馬はただでさえ変化が大きいが、4歳牝馬はこの時期、成長途上ということで、成長は一層激しくなる。
も感情を害すると、それがシコリになり、一流になれるはずが、凡馬で終わってしまうことさえある怖い時期なのだ。 ダイナカールは自分でもうまく教えることができたと思っている。
彼女は入厩当初は評判になっていなかったが、乗ってみると、旺盛なガッツを秘めていると感じた。 その反面、気難しさがあり、ゲートを嫌うなどした。
おそらく、接し方を少しでも間違ったら、彼女はオークスを勝つまでの活躍はできなかったかもしれない。 今年のクイーンCでボクはレディゴシップに乗る。
ダイナカールと同じノーザンテースト産駒だが、タイプはちがう。 祖母モルフランダーズの父スワップスの影響が感じられるのだ。
コンビを組んだS騎手に「私の大好きな馬」といわせたアメリカの歴史的名馬スワップスのレースぶりは、ビデオで何度かみたことがあり、ガンガン先へ行って相手をネジ伏せるタイプという印象を受けた。 日本ではスワップスの血はあまり成功しているとはいえないが、レディゴシップはその良さが出ているかなりの素質馬だ。
実際、前走のデビュー戦は積極的に先行して勝っている。 今度はどう乗るか。

気に乗るのはもちろんだが、キャリアの浅い馬はレースを覚えさせるのも騎手の重要な役目。 彼女次第では抑える競馬をとも思っている。
(1月24日)1マイルは競馬の基本距離とよくいわれるが、今回は東京と中山の1マイルの違いを中心に、1マイルという距離に触れてみる。 1マイルはサラブレッド競走の重要な距離である。
アトランダムにいろいろな馬の成績をみればわかるように、ほとんどの馬が一度以上この距離を経験しており、比較しやすいのがその理由のひとつ。 そして、競走馬はスプリントを生かして走る馬、スタミナを生かして走る馬と、大まかにふたつのタイプに分けることができるが、1マイルはそのどちらにもチャンスがある距離なのだ。
もっとタイプを細かく分けることができるが、乗り手のボクの感覚では、通常はこのふたつで十分。 同じ距離でも、トラックによってかなり差があるもの。
東京の1マイルはスタートして直線を600メートル近く走り、コーナーが2つ。 これが全体的にゆったりとしたカーブで、その距離も500メートル強あり、最後の直線が500メートル。
対して中山。 まず200メートル直線を進むと、200メートルほどのきつめのコーナーがある。
その後200メートルの直線→200メートルのゆるめのコーナー→200メートルの直線→300メートルのきつめのコーナー→200メートルの直線。 こう書いただけで、中山の1マイルの忙しさがわかるだろう。
レコードの比較をすると、東京の1マイルはラブシックブルースが昭和62年10月の牝馬Tタイムズ杯でマークした1分33秒5。 中山のそれは同年9月の京王杯AHでボクが乗ったダィナアクトレスがマークした1分32秒2。
全般的にみても中山の方が速いタイムが出る。 認識してほしいのは、数字をうのみにして東京、中山のタイムを同格に比較してはならないということ。
タイム差が出る理由は物理的なものでなく、騎手の心理状態によるものが大きい。 速いタイムが出るには、最初のペースがある程度速くなることが条件。

東京は最後の直線が長く、騎手はどうしても前半ゆったり構えてしまいがちだ。 だから中山よりも速いタイムが出にくい。
その傾向は中山から東京に変わったばかりの時に顕著になる。 直線300メートルと500メートルの差のイメージが、開催変わりの初っ端には特に大きく影響して、多くの騎手は無意識のうちに前半、手綱をしぼってしまうものだ。
クイーンCがいい例だろう。 ボクは将来を考え、レディゴシップに抑える競馬をさせるかもしれないと書いたが、あまりのペースの遅さにそれができなかった。
東京2週目からはある程度ペースは速くなるだろう。 T新聞杯でのボクの騎乗予定馬はシジノショウグン。
1400メートルから1600メートル向きのスプリント・タイプの馬だ。 気難しい面があるのは難点だが、気分良く走らせ、スプリントの戦いになればチャンスがあるだろう。
(1月31日)K通信杯4歳Sが行われる。 スプリント・タイプの馬には間違いなく有利だ。
逆に東京はスタミナ・タイプの馬でも十分勝負できる。 東京競馬場の芝1800メートルという重要な条件での戦いだ。

皐月賞まで約2カ月と時期が迫り、例年、このレースが終了すると、おおよそながら、クラシックの全体像がみえてくるものだ。 馬にとってクラシック・レースは1生に一度のチャンス。
誰でも華やかな舞台に自分の馬を進めたがるのは人情だが、怖いことがある。 6、7分程度しか素質が開花していない馬を9、あるいは10のレベルの戦いにぶつけると、馬によっては精神的に打ちひしがれて、その後、走るのが嫌いになってしまうことが往々にしてある。
そうなると、本当は10まで素質が開花すれば、相当な活躍が見込める馬が、サッパリ成績が上がらずに終わる結果になりかねない。 馬の格というのは実に微妙なものだ。
例えば同じ日に同じ距離で、4百万下条件と9百万下条件のレースが行われ、タイムもいっしょ、ペースもいっしょだったとしよう。 じゃあ、4百万下を勝った馬が9百万下でも勝てるかというと、必ずしもそうではない。
人間の世界でもあるだろう。 野球でいえば、同じ技量を持った投手でも、自信に満ちて打者を威圧できるのとできないのとでは大違い。
投げる前から勝負は始まっているのだ。 競馬もそう。
シンボリルドルフは発走直前の輪乗りの時に、ライバルを見渡して威圧したものだ。 オグリキャップも有馬記念の時には馬自身が走ることに対して、ずいぶん自信を持っていた。

みていた方も多いと思うが、ゲート入りする際にちょっと立ち止まって、ブルンブルンと首を伸ばして振ったのだ。 聞くところによると、彼は毎回この仕草をみせるらしい。
いってみれば武者震い。

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